2015年11月19日付(物流ニッポン)
トラック「時価」査定 運送業界 埋蔵金3兆円ABL、資金調達手段に
債務超過で金融機関から融資を断られた運送会社が、実は黒字の優良企業だった――。
保有するトラックを市場価格に基づき時価査定したところ、決算書に計上されている「車両運搬具」の金額をはるかに上回り、財務諸表が大幅に改善したケースがある。日本中古トラック査定協会の大野弘人理事長(68)は「全国6万3千の運送事業者が持つ全車両の価値を正しく評価すれば、運送業界には3兆円規模の埋蔵金が存在することになる」と話す。
運送会社が赤字決算となる主な原因として、資産の大部分を占めるトラックの価値が帳簿上、適正に評価されていないことが挙げられる。トラックの減価償却は通常5年で、5年後には税務上の簿価が1円になってしまうのだ。
しかし、トラックを時価査定すると実勢価格ははるかに高く、これを有形固定資産評価益として決算書に反映させると、黒字の優良企業となる場合がある。大野氏によると、「4千万円の債務超過で銀行から融資見合わせを通告された運送会社が全保有車両を時価査定したところ、決算書上の『車両運搬具』は500万円弱だったのに対し、実勢価格は20倍以上の1億1千万円にもなった。それを決算書に反映させると、6千万円の黒字だったことが判明した」。
つまり、金融機関から「要注意先」「実質破たん」などとレッテルを貼られても、実は優良企業である可能性があるのだ。更に、運送会社の企業価値アップにより資金調達が容易になれば、運送業界だけでなく周辺への経済効果も大きい。
金融庁は2013年2月、動産担保融資(ABL)の積極的活用を促す方針を打ち出した。東京都では14年5月からABLを開始し、中小企業の新たな資金調達手段を提供。15年7月には千葉県もABLの取り扱いを始めている。
大野氏は「税務上の簿価が資産価値と思われているが、実際の価値はもっと高い。簿価ではなく、『時価』査定による実勢価格で正しく評価するというアクションによって、運送業界の埋蔵金を発掘でき、日本の運送業全体を元気にできる」と時価会計導入のメリットを強調する。