2015年7月6日付(物流ウィークリー)
トラックで企業価値を上げる 動産としての評価 財務状況一変の例も
運送会社の赤字の原因には、財務内容が実際よりもはるかに低く評価されていることが挙げられる。リース会社や金融機関との交渉が円滑に進まず、資金調達がうまくいっていないケースが少なくない。この要因の一つに、トラックの資産価値が帳簿上評価されないことがある。減価償却は通常5年ほどの短期間で行われており、高額な新車を買っても、5年後には簿価1円になってしまう。この埋没したトラックの資産価値を正当に評価しようという取り組みがある。
トラックの価値を評価する第三者機関である日本中古トラック査定協会は、運送会社が保有するトラックを市場の実勢価値で評価する「時価会計」を推奨している。海外での需要増に支えられ、日本製トラックは中古市場で高価で取引されている。
同協会では、トラックの資産価値を評価する独自の査定証を発行している。同協会の会員中古トラックディーラーが、車両を査定した情報を元に査定証を発行。同協会に加盟する企業であれば、査定証に記載された金額で車両を買い取ることで、金融機関への信用となる。代表の大野弘人氏は「トラックの価値を市場価値で評価する時価会計に切り替えることで、運送会社の企業評価は上がる」と語る。また、「会計を扱う税理士は、企業会計原則に則り、企業の資産を正しく評価・報告する必要がある」と指摘する。
時価会計に切り替えたことで、財務状況が一変した例もあるという。銀行から融資を断られた運送会社の保有車両をすべて査定したところ、決算書に計上している車両運搬具は13万円だったが、実勢価格は1400万円と実に100倍もの資産価値があった。これを有形固定資産評価差損として、決算書に反映させたところ、自己資本比率39%という優良企業となった。
金融庁は、中古企業などが経営改善・事業再生などを図るための資金や、新たなビジネスに挑戦するための資金の確保につながるよう、2013年2月からABL(動産・売掛金担保融資)の積極的な活用を推奨している。これらを背景に、トラックを動産担保にして融資を行う企業もある。
グリーンベル(葛西宣行社長、神奈川県川崎市麻生区)はトラックや建設機械を担保にした融資「ABL48」を展開している。同社は中古トラック販売事業を手掛けており、「トラックの価値を理解している」ことが強みだ。税務上の簿価ではなく、市場価格に基づいた時価に対して融資枠を設定する。葛西社長は「トラックは動産としての価値が高く、ABLに最適」と強調する。
運送会社の資産の大部分を占めるトラックの価値を再評価し、本来の資産価値と決算書上の乖離をなくすことで財務諸表は改善し、運送会社の企業価値は大きく向上する。ABLの普及で企業の正しい価値が評価されることが期待される。
掲載:「物流ウイークリー」(外部サイト)